辨 |
Citrus medica には、次のような種内分類群がある。
シトロン(マルブシュカン) Citrus medica(枸櫞 コウエン,jŭyuán,くえん・香櫞;E.Citron;F:Cedrat)
ブシュカン 'Sacrodactylis'(C.medica var.sarcodactylis;
佛手・佛手柑;E.Fingered citron)
セイバンレモン subf. dulcis(C.medica var.gaoganensis;山檸檬) 臺灣産
var. yunnanensis(雲南香櫞) 雲南産
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ミカン属 Citrus(柑橘 gānjú 屬)については、ミカン属を見よ。 |
訓 |
和名ブシュカンは漢名佛手柑の音。
「果實ハ冬ニ至リテ黃熟シ、形チ長シ、基部圓形ヲ呈シ上部ハ分裂シテ宛モ十餘指ヲ駢ベタルガ如キ畸形ヲ呈ス、故ニ佛手柑ノ名ヲ得タリ。しとろんナルまるぶしゅかん卽チ枸櫞ノ一變種ニシテ佳香ヲ放チ觀賞ノ品トス」(『牧野日本植物図鑑』)。 |
深江輔仁『本草和名』(ca.918)枸櫞に、「和名加布知」と。
源順『倭名類聚抄』(ca.934)枳殻の条に、枸櫞は「和名加布智」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1806)26枸櫞に、「マルブシュカン」と。 |
漢名・英名ともに、果実が人の手指の形に似ることから。種小名 sarcodactylis は「肉質で指状」の意。 |
説 |
ブシュカンは、インド北東部・ヒマラヤ南麓原産、ミカン属の自生種の一。インドシナ・ジャワには古く入る。
今日の東アジアでは、臺灣・浙江・安徽・福建・兩廣・四川・雲南などで栽培。
日本には、中国をから江戸時代に入る。今日では、和歌山県などの暖地でわずかに栽培する。 |
古く『旧約聖書』にその名が見え、ペルシアでも既に紀元前に栽培されていた。 |
ヨーロッパでは、17c.中葉に記録がある。 |
誌 |
果実の形・芳香を観賞するために栽培。また、果実を砂糖煮にして 食用にする。 |
中国では、マルブシュカンなどの成熟した果実を香櫞(コウエン,xiāngyuán)と呼び、薬用にする(〇印は正品)。『中薬志Ⅱ』pp.303-306 『全国中草葯匯編』上/622-623 『(修訂) 中葯志』III/61-65
〇Citrus grandis × junos(C.wilsonii, C.hsiangyuan, C.grandis var.shangyuan;
香圓・西南香圓) IPNIによれば、C.cavaleriei × C.maxima
ザボン(ブンタン) Citrus maxima(C.grandis;柚・文丹・抛)
〇シトロン(マルブシュカン) Citrus medica(枸櫞・香櫞)
キンクネンボ Citrus sinensis(甜橙・橙子)
カラタチ Citrus trifoliata(Poncirus trifoliata;枸橘・枳・臭橘)
また、ブシュカンの果実を佛手(フツシュ,fóshŏu)・佛手柑と呼び、その蒸留液を佛手露と呼び、花・蕾を佛手花(佛柑花・川手花)と呼び、根を佛手柑根と呼び、それぞれ薬用にする。『中薬志Ⅱ』pp.132-133 『(修訂) 中葯志』III/57-60 『全国中草葯匯編』下/337-338 |